警備員の仕事と聞くと、交通誘導や歩行者の案内を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実際の現場では、それ以上に大切なものがあります。それが「声掛け」です。的確で聞き取りやすい声掛けができる警備員は、現場の安全を守るだけでなく、周囲から信頼される存在になります。
特に夜間や視界の悪い状況では、声掛けの有無が事故を防ぐ決め手になることもあります。静かに立っているだけの警備員よりも、大きな声で注意を促す警備員のほうが断然カッコイイと感じられる場面がたくさんあります。
この記事では、実際の工事現場で起きた出来事を通して、元気な声掛けができる警備員がどのようにはカッコイイのかを具体的にご紹介します。現場で働く人のリアルな姿に、きっと新たな視点が生まれるはずです。
声掛けの必要性
工事により歩道が一時的に通行できなくなり、仮設の歩行者通路が設けられている現場をよく見かけます。このような現場では通常、警備員が配置されていますが、しっかりと声掛けを行っている方はあまり多くありません。
工事によって周囲に危険が生じているにもかかわらず、警備員が注意を促さないのは明らかに職務を果たしていない状態と言えるでしょう。
確かに、人前で大きな声を出すことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、警備員として現場に立つ以上、いずれ声を出さざるを得ない場面が訪れるのです。
ある夜の出来事
ある夜勤のこと、駅前の片側3車線の県道を舗装する工事でした。規制区間は交差点を含んで200mを超えており、駅前と言うこともあって夜勤とはいえ歩行者も非常に多い状態です。2号警備の現場としては難易度MAXの現場と言えるでしょう。
そんな現場での朝礼で現場監督から、
「パワーライト(照明)の台数が少ないから警備員さんよろしくね」
と軽く言われ、その想像以上の少なさに本気で驚きました。
だからといって暗いから中止にしろとも言えず工事は始まりました。工事内容は片側1.5車線ずつの切削オーバーレイの舗装工事です。切削が終わった段階で愕然としたのが、あまりにも暗いため、削った分の段差がほとんど見えないのです。
駅の近くということもあり結構な人通りがありました。心配になり全体の様子を見て回ると、ある交差点に来て愕然としました。道路を削っている時には明るかった交差点が真っ暗になってしまっているのです。
夜も遅くなったため店や看板の照明が消えてしまったようです。横断歩道の段差がほとんど見えません。県道の結構広い交差点で信号待ちが常に10人近くいる状態です。いつ転倒する歩行者が出ても不思議ではない状況です。実際、段差に躓いている人を見かけます。余分なパワーライトはありません。
ここに配置されていた警備員は歩行者誘導として道路を挟んで一人ずつ。うち一人は新人くん。
仕方がないので新人くんと一緒に歩行者誘導を行うことに。
一回新人くんにやらせてみました。
信号が変わるのを待っている間に一人一人声を掛けて注意を促していました。
大変良くやってくれていると思いましたが、やはり段差で躓いている人がいます。
段差が何処にあるのか分からないのだから当然です。
今度は交代して私がやってみました。
新人くんが一生懸命説明していた信号待ちの間、私はボーっと信号を眺め、信号が青に変わる直前に信号待ちの歩行者全員に聞こえるように
私:「恐れ入りまーす。この先段差ありまーす。足もとご注意くださーい」
これなら一回で済むので楽ですね。
信号が変わったら段差のある位置に急ぎ、
私:「この辺り段差ありまーす。この辺でーす」
と叫んで注意を促しました。
新人くんも一人一人に声を掛ける面倒さに気付いたようです。
こんな事一日中はやってられませんが、終電まであと1時間少々です。
新人くんと励ましあいながら張り切った結果、無事終電時間を迎える事ができました。
新人くんと健闘を称え合っていると、
監督:「いやぁ大変だったね〜」
と監督がトコトコとやって来て、
監督:「大変なのは分かるんだけど、警備員がうるさいって住人からクレーム入っちゃってさ〜」
なんとなく予想はしていましたが、やっぱり来ましたクレーム。
時間帯を考えれば一人一人に声を掛けていた新人くんのやり方が正しかったのかもしれませんが、少なくとも広い横断歩道の段差の場所は叫ばないと危険だったのは間違いありません。
監督:「もうチョット抑えぎみでヨロシクね」
監督本人もパワーライトの台数が少ないからだと分かってて言ってる様なので、あえて言いませんでしたが、
私の心の声:「アンタのせいだろ!!」
声掛けによる効果
このような大きな声での声掛けには、「通行をスムーズにするため」という以上の、多くの効果があります。
まず、周囲に「ここは危険な場所である」と強く認識してもらうことができます。さらに、はっきりとした声には説得力があり、注意喚起の効果も高まります。
反対に、小さな声で何を言っているのか分からないようでは、通行人も耳を傾けてくれません。
また、元気よくハキハキと声を出す警備員の方が、見た目にも信頼感があり、周囲に良い印象を与えるものです。
警備員の声掛けが現場の安全を左右する
工事現場において「警備員」と「声掛け」は、安全確保のために極めて重要な要素です。歩道が通れず仮設通路が設置されるような状況では、通行人への的確な案内と注意喚起が求められます。
しかし、実際には多くの警備員が十分な声掛けを行っておらず、結果として危険が増している現場も少なくありません。特に夜間工事など照明が不足し視認性が悪い環境では、大きな声での一斉注意が有効であり、歩行者の安全を守るための重要な手段となります。
現場での実体験からも分かるように、丁寧な個別対応だけでなく、状況に応じて全体に向けた大きな声での案内が必要な場面もあります。
警備員が的確なタイミングで、明瞭な声掛けを行うことは、安全管理の本質であり、現場の信頼性にも直結するのです。